株式会社アンドワウ代表・若杉憲一郎さん【京都の素敵な経営者さまへインタビューVol.4】

京都の人へインタビュー

【京まちあるき】では、京都の経営者様や京都で働く素敵な方々をご紹介しています。

今回は、株式会社アンドワウ代表の若杉憲一郎さんにお話を伺いました。

株式会社アンドワウ代表・若杉憲一郎さんについて

若杉憲一郎さんは、株式会社アンドワウの代表をされている方です。

京都発祥のバームーンウォーク(bar moon walk)をフランチャイズで40店舗ほど展開するほか、京都でカフェプリマ(cafe prima)やパティスリープリマ(at’prima)を運営されています。

『夜は短し歩けよ乙女』にも登場する“バームーンウォーク”

バームーンウォークは京都で開業し、全国に展開しているショットバーです。カクテルを中心に500種類以上のお酒を、リーズナブルな価格で提供しているとのこと。バーに慣れていない人でも気軽に通えるカジュアルさが魅力です。

また、京都のバームーンウォーク四条木屋町店は、森見登美彦原作の映画『夜は短し歩けよ乙女』に出てくる『BAR月面歩行』のモデルにもなりました。現在も聖地としてファンに愛されているそうです。

旬のフルーツたっぷりのタルト専門店プリマ

一方、プリマ旬のフルーツをたっぷり乗せたタルトが人気の洋菓子店

パティスリープリマ五条本店で製造したタルトは、テイクアウトはもちろん、カフェプリマ四条烏丸店の店内でも食べられます。お酒も飲めるカフェなので、特別な日にぜひ利用したいですね。

気軽なランチプレートもあり、四条でのお買い物や仕事の昼休憩にも立ち寄れるお店です。

バーテンダーから40店舗を束ねる経営者へ

生まれ育った家は決して裕福ではなかったという若杉さん。お父さんやお姉さんを早くに亡くしたうえ、障害を持つ弟さんやお母さんの面倒も見る生活。苦労の多いなか、20歳でバーテンダーの世界に飛び込みました。

スタッフとしてバーを運営するというより、経営そのものをやってみたいという思いが最初からありました」と若杉さんは振り返ります。

10名入るかどうかという小さなお店で、アルバイトのときからオーナーの背中を見ながらやってきて、自分もやりたいと思ったんです。

若杉さんの視線が当初から“経営”という大きな枠組みに向けられていたのは、自然な流れだったようです。

高校卒業後は経営のノウハウを学べる会社に就職し、経営の中枢に入って原価計算や人事、マネジメントの基礎を叩き込んだとのこと。3年で独立する計画のところ、結果的に5年間勤め上げ、起業への道を歩み始めました。

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

友人と共同経営で立ち上げた店舗は順調に拡大したものの、最終的には契約関係のトラブルによって、すべてを失うという苦い経験も味わいました。ただ、このピンチも若杉さんにとって転機となったようです。

以前勤めていた会社がフランチャイズ展開をしていたので、フランチャイズで出店させてほしいと頼みました。すると、それなら全部任せたいということになって、7~8店舗を買わせていただくことになったんです。

そのときはまだ東京に1、2店舗しかなかったので、東京に進出することから始めていきました。

若杉さんのフランチャイズオーナー育成術

創業者の事業を引き継ぐ形で、バームーンウォークのトップに立った若杉さん。突然全国展開の店舗を運営することになり、普通なら戸惑いを覚えそうなところですが、若杉さんにはこれまでに培った経営のノウハウと経験がありました。

バームーンウォークは、外部からオーナーを募るのではなく、現場で働くスタッフをオーナーへと育て上げるシステム。これも、フランチャイズ展開がうまくいっているポイントだそうです。

ラーメン屋の暖簾分けに近い感覚ですね。店のシステムを理解しているスタッフが、そのままスライドしてオーナーになる。

18、19歳の子がアルバイトで入ってきて、バームーンウォークが好きで『自分も店を持ちたい』と思ったときに、その夢を叶えられるという形です。

若杉さんがオーナーに育てていくのは、学歴や経歴に自信がなくても「稼ぎたい」「自分の店を持ちたい」というハングリー精神を持った若者たち

バー業界には、学歴はなくても“お金を稼ぎたい”という思考の人間が集まります。僕はそういう若者を応援したい。

彼らは変わらなければ稼げないことを本能的に理解しているので、こちらの指導も素直に吸収してくれます。

高校にもまともに通えていなかったり、業界の特性から夜の仕事経験者も多かったり。そんな彼らに若杉さんは、毎日きちんと出勤するといった基本的な働く姿勢から教え、数多くのオーナーを輩出してきました。

その根底には、若杉さん自身が苦労を重ねながらも持ち続けてきた、「何かを一から作りたい」「責任を持ってやりたい」という思いがあるそうです。

オーナー志望であったり、オーナー的な思考を持っていたりするものの具体的な経営のやり方がわからない。そういう人たちをこれからも応援していきたいと教えてくれました。

新規事業へのチャレンジ

順調にフランチャイズ展開をしていた若杉さんに再び転機が訪れたのは、コロナ禍のことでした。夜の営業が制限されるなか、オーナーさんたちもなんとか踏ん張っていたものの、ロイヤリティビジネスは売上がないと成り立ちません。

そこで新たなチャレンジとして始めたのが、肉サンド専門店のジューシーミート(Juicy Meat)。本格的なローストビーフなどの肉料理を、サンドイッチや一品料理として提供していたそうです。

あの時期は何でも“バズらす”必要があったんです。でも流行りにずっと乗せておかないといけないってなると難しい。

料理人を雇わないといけないとか、技術的なことを考えたときにもちょっと難しかった。原価も合わなくて、これじゃいけないなと思ったんです。

改めて事業を模索していたところ、ケーキ作りができるスタッフがいたこともあり、事務所の1階にケーキ屋「パティスリープリマ」を始めました。2024年2月のことだそうです。

その際、「ジューシーミート四条烏丸店」も、「カフェプリマ四条烏丸店」として生まれ変わりました。

こうした経緯もあり、カフェプリマではジューシーミートから引き継いだステーキサンドを提供しているとのこと。フランチャイズ展開が難しかったというくらい、作り方にこだわったステーキサンド。ぜひ食べてみたいと思いました。

社員にも夢を叶える導線作りを

プリマは今のところ、フランチャイズ展開ではなく社員を雇う形で運営しているのだそうです。これまでオーナーを育てることに集中してきた若杉さん。社員を育てることに対しては、悩みも多いのだとか。

オーナーは自分で稼ぐ意識や必死さがあります。変わらないと稼げないからこそ、しっかりしないといけないってことを理解してもらえるんです。

一方で社員は、会社で雇用される立場。オーナーになりたい人とは仕事に対する考え方も異なり、モチベーションも人によってさまざまです。

若杉さん自身もこれまでオーナー的思考でやってきただけに、「社員のモチベーションがどこにあるのか図りかねている」と教えてくれました。

たとえば「ケーキ屋になりたい」という夢を持って入社してきた人に、どうすれば夢を叶えるサポートができるのか?その夢のためにはケーキを作るだけでなく、接客などさまざまな業務も必要になることを、どのように伝えるのがベストなのか?

また、プリマに限らず多くの会社で起きている問題でもありますが、人手不足やスタッフの欠勤でシフト作成にも苦労しているのだそうです。

社員でも、オーナーと同じように全体的な考えを持って成長してほしいと思っているんですよね。

試行錯誤を重ねながらも、社員が持つ夢を叶えるための導線作りを諦めない、若杉さんの熱い思いが感じられました。

若杉さんが今後叶えていきたいこと

今後のお仕事の展望についても、若杉さんに伺いました。

バー事業とカフェ事業のフュージョン

パティスリープリマでケーキを製造しながら、カフェプリマをフランチャイズ展開。バームーンウォークでやってきたことを生かせば、今後そういった可能性も広がります。

また若杉さんの頭の中には、バーとカフェを融合させた新しい業態の構想もあるそうです。カフェへのチャレンジは、それを見越してのことだとも教えてくれました。

今のオーナーたちが、“この事業面白いよね”って言ってやってくれるようなものを目指せたらと思うんです。システムを移行するだけで今のムーンウォークをバージョンアップさせられるようなもの。それがあれば、新たなオーナーも育てやすいのかなと。

より多くの人がチャレンジできる環境を用意したいと考えているとのこと。そんな若杉さんにとっての一番の財産は、「一緒にやってきた、同志であるオーナーたち」。

ここ最近はカフェに力を入れてきたので、来年はバームーンウォークのほうも整備したいですね。オーナーをもっと強固なものに育てていきたいです。

コロナ禍がそうであったように、飲食業は何かと社会の状況に左右されやすいものです。また、「飲食業は簡単に始めやすいからこそ、下に見られやすい職業でもある」と若杉さんは言います。

飲食業以外を選択すれば、もっとラクなのかもしれない。でも、この業界が好きだからこそ、飲食業がもっと発展していくようなことをしていきたい。

そう語ってくれました。

グローバルな展開も見据えて

若杉さんの視線は、海外にも向けられています。

たとえばインドネシアの人を日本で育てて、インドネシアに帰ってからもやっていける。そんな形を作れたらいいんじゃないかなと思います。

人口減少が進む日本とは異なり、成長の著しいインドネシアなどの国々。そこから日本へやってきた人々を育て、自分の国で事業展開できる仕組みを作ることも考えているのだそう。

「働く」ということが複雑化してしまった日本とは対照的に、そういった国々から来る人たちは、“日本でお金を稼ぐため”と動機がシンプルなのだとか。

シンプルな動機で学んだ技術がそのまま財産になり、国に帰ってからも商売ができて人を雇うこともできる。言葉が通じなくても教えられる仕組みを作り、現地の発展に貢献できるようなモデルを作りたいですね。

お話を伺い、働く人を一人育てることは、その国の発展にもつながるくらい大きな可能性を秘めているのだと感じました。

働くことのシンプルな喜び

インタビューの最後、若杉さんに「働くとは?」と尋ねると、迷いなくこう答えてくれました。

生活の一部でしかないですね。

重ねて「経営とは?」と尋ねると、「お金を稼ぐこと」と、これもまたシンプルな回答。

働きたくないって思ったことがないかもしれないですね。もちろんしんどいこともありますけど、売上が上がるからお金がもらえるし、それが達成感にもなります。

作ったものを美味しいと言ってもらえたら嬉しい。

たくさんのお客さんが来てくれて、忙しくなったらありがたい。

物やサービスを売るということが、組織の中で細分化されている日本においては、働くことに対する本来の考え方が薄れているのかもしれません。

若杉さんの元でオーナーや社員として働く人たちは、仕事に対する気持ちが正されていくに違いないと思いました。ときにそれは厳しくもあるけれど、純粋な思いを持って若杉さんの元で働くことを学べば、確実に稼いでいく力を身につけていけるのでしょう。

「お店を持ちたい」「稼ぐ力をつけたい」人をこれからも応援

最近はとても忙しいという若杉さん。

これやらないと、あれやらないと…って状態で、何が起こるかわからない。でも、それもまた面白いなという感じ。それが人生なんじゃないですか。上がったり下がったりがあるから楽しい。

学歴や経歴がなくても自分のお店を持ちたいとオーナーを目指す人。お金を稼ぐために日本へやってくる海外の人。彼らには共通して、決して順風満帆ではなかった環境や道のりがあったことでしょう。

ご自身のことを多くは語らない若杉さんですが、ここまでにさまざまな苦労があったからこそ、働くことに対してまっすぐで、人生の浮き沈みすらも楽しめる器の大きさがあるのだと感じました。

これからも若杉さんは、複雑化する社会のなかで、シンプルに「稼ぐ力」を身につけようとする人々の背中を押し続けていこうとされています。

お店を持ちたい」「経営を学びたい」こんな気持ちのある方は、ぜひ若杉さんの元で働いてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
まる きょうこ

当サイトの運営者。
20代の頃より京都を旅し続け、2016年に子連れで関東圏から京都市左京区に移住。京都の本屋、カフェ、美術館、レトロ建築めぐりが好き。

仕事はWebライターとKindle出版サポート。京都愛を生かし、地域メディアで多数執筆しています。

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